『キングスマン』(原題 Kingsman: The Secret Service)
さっそく昨日2回目を観てきました。
セリフなどの解説も行いたいですが、今日は文化背景の解説です。
□あらすじ
ざっくり言うとどこの国にも属さない世界最強のスパイ組織のお話です。そんなスパイ組織「キングスマン」のメンバーの1人が殉職し、欠けた人員を補充するため、コリン・ファース演じるハリー・ハート(コードネーム:ガラハド)やその他キングスマンは若手の候補者をリクルート、教育・訓練します。
ハリー以外が連れてきた候補者はオックスフォードなどの名門大卒、いわゆるエリートの上流階級出身ですが、ハリーが選んだのは犯罪歴もあるヤンキータイプの平民、労働者階級の出身です。
『キングスマン』は高級スーツに身を包んだスパイが戦うヴァイオレンスアクションでもありますが、『マイ・フェア・レディ』のような階級を超える成長物語でもあるんです。
□階級社会
日本人にはあまり階級意識はありませんが、イギリス人は年々階級への意識が強くなっているそうです。階級は、貴族出身の上流階級(upper class)、中産階級(middle class)、労働者階級(working class)に分かれます。
上流階級は貴族(aristocrat)の古い家系の出身で代々受け継がれるものなので、誰でもなれるものではありません。英国王室、公爵や伯爵がイメージしやすいはずです。
中産階級は会社経営者や専門職(弁護士、医師、研究者など)に就く上層中産階級(upper middle class)と、中間管理職や事務職に就く下層中産階級(lower middle class)に分かれます。
労働者階級は工場労働者などの肉体労働者を指します。
労働者階級に生まれても、一生懸命働けば上の階級に上がれるというわけではなく、その階級を何世代も維持しなければ、ただの成金としか見られないようです。
階級の影響は生活の節々にあらわれます。たとえば、話し方、アクセント、服装、マナーなどです。
『キングスマン』の映画の中でも、これらの特徴がはっきり描かれているので、ぜひ注目してみてください。
主人公の若手候補者エグジーや、その母親の恋人の取り巻きがまさに労働者階級で、話し方やアクセントに特徴があるのが分かります。
対照的にキングスマンのメンバーは地域の訛りはあるものの上品なアクセントで話しています。(階級とはあまり関係ありませんが、サポート役のマーリンはスコットランド訛りです。)
貴族の出身ではないのに上流階級のように上品な話し方をしたり、高級な衣服や食事を嗜むと「スノッブ(snob)」と言われますが、本作の中でもある登場人物がsnobと言われています。
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このあとネタバレがあるのでまだ観ていない方は、映画を観てから読んでください。
この先ネタバレ注意
マイケル・ケイン演じるアーサーが序盤でハリーに対して「実験」と言っていますが、これは「労働者階級出身者をキングスマンに育て上げる」という実験なんですね。
アーサーはあたかも貴族出身(本名もチェスター・キング)で自らが上流階級の出身であるように振舞っていますが、おそらく彼は労働者階級の出身です。
これが分かるのが彼が最期に言うセリフで、"You dirty little fucking prick..." 汚い言葉を使っている上、このときのアクセントがコックニーなんですね。
コックニーはロンドンの労働者階級のアクセントで、『マイ・フェア・レディ』を観たことがある方は分かると思いますが、かなりきついアクセントです。日本でいうと江戸っ子みたいな話し方ですね。
上流階級に見えるアーサーが実は労働者階級出身。
彼は裏切ってしまいましたが、作法さえ身につければ階級を超えることができる、Manners Maketh Manというモットーが 伺えるシーンでした。
背景知識がなければ見逃してしまうシーンなので、映画を一度観た方も、もう一度観てぜひチェックしてほしいと思います。
僕もあと何回行けるかわかりませんが、同じ映画でも観るたびに気づくことが増えるので映画館であってるうちにまた観に行きたいと思います。
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