2013年12月20日金曜日

『おおかみこどもの雨と雪』 日本人がオオカミ人間を描くとこうなる

金曜ロードショーで放送されるらしいので、珍しく邦画のお話です。


簡単に、サクっと書くので、気軽に読んでみてください。
英語の話は無し。文化の話がメインです。


この映画から分かるのは、日本人と欧米人がオオカミをどういう視点で見ているか、でしょう。

 まず海外のオオカミ人間を描いた映画を見てみると、

『アンダーワールド』シリーズでは、ヴァンパイアとオオカミ人間が戦います。


この映画に登場するオオカミ人間はこんなんです。


恐いです。モンスターです。


『ハリー・ポッター』シリーズに登場するオオカミ人間もこんな感じ。





欧米の人々はオオカミに対してかなりネガティブなイメージを持っているのが分かります。

童話『3匹のこぶた』、『赤ずきん』でもオオカミは悪者ですよね。

北欧神話にもフェンリルというオオカミが神の敵として登場します。



では、日本人はオオカミに対してどういうイメージを持っているでしょうか。

『おおかみこどもの雨と雪』では「オオカミはなんでいつも悪者なの?」と尋ねるシーンがあります。

ただ、オオカミが悪者として描かれた作品は、全て海外から入ってきたものなんですよね。

自分が持っているイメージを考えてみると、童話や映画の影響で多少悪いイメージがあるかもしれませんが、

そもそもそんなに印象が強くないんじゃないでしょうか。

欧米的な「オオカミ=絶対悪者」という感覚はないはずです。



まとめると、

☆オオカミにたいする考え方
欧米 → 悪者 ネガティブ
日本 → そんなに悪いイメージは持ってない

となります。

ここで、なぜ日本人と欧米人の考え方に違いが生まれたのか考えてみると、文化背景がわかります。

根幹になる考え方は、

欧米人が牧畜主体の民族で、日本人が農耕主体の民族であることです。

欧米人は家畜として牛や羊、豚の飼育を中心に生活しているので、
夜中に大切な家畜を襲いにくるオオカミは脅威だったわけです。

一方で、日本人は農作物中心の生活なので、
害になるのはイノシシやシカなどの草食動物です。
オオカミは草食動物を狩ってくれるので、
どちらかといえばプラスのイメージが強いです。

また、狩りがとても上手なので、狩猟採集中心の生活をしていたインディアンの人々にとっては、神聖な生き物としてとらえられることもあります。アクセサリーがあるので肉食動物であるワシもデザインに使われています。
同じようにアイヌ民族もクマを神聖視するので、熊送りというお祭りがあるそうです。




地理的、民族的な文化が今の物語や映画にまで影響していると思うとおもしろいですよね。

『おおかみこども雨と雪』という作品は、欧米化されつつある日本人のオオカミ観を、本来のプラスのイメージを取りもどすきっかけにもなるんじゃないかなと思います。


この映画は大好きな映画で、同じ細田守監督の『時をかける少女』『サマーウォーズ』も好きです。

細田監督の映画は、なんでもないシーンで泣いちゃうんですよね。
それだけ、キャラクターの心理がよく描かれているんだと思います。

『おおかみこどもの雨と雪』でも「ナナメってる!」というセリフでなぜか泣きました。
かわいいシーンなのに。。よく分からんですね。


ちなみにオオカミと月は関連づけて描かれることが多いですが、
これにも文化的な理由があります。

「月」に対するイメージの違いもそのうち記事にしますね。

では。



 

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