2013年11月2日土曜日

『Vフォー・ヴェンデッタ』2013 その1 自己紹介スピーチ

 
"Remember, remember the fifth of November
Gunpowder, treason and plot
I see no reason why gunpowder treason
Should ever be forgot"



...さて!

Vフォー・ヴェンデッタに捧ぐ5夜連続更新、第1夜です...!

第1夜ということで物序盤のVの自己紹介シーンを掘り下げていきます。

まずは動画と台詞を載せておきます。

青字はプチ解説です。大事なところは赤で。





V: I can assure you I mean you no harm.

「危害は加えない」

Evey Hammond: Who are you? 


「誰なの? 」


V: Who? Who is but the form following the function of what and what I am is a man in a mask. 


「さて 誰と問うなら“仮面の男”と答えよう」

Evey Hammond: Well I can see that. 


「分かってる」

V: Of course you can. I'm not questioning your powers of observation; I'm merely remarking upon the paradox of asking a masked man who he is. 


「そうか 目はいいようだが 仮面の男に“誰か”と訊くのは愚問だな」

*直訳すると、「私は君の観察力について訊いているのではない。」

merelyはonlyと同じ意味、paradoxは「逆説」ですが、ここでは「矛盾」としておいていいでしょう。

「仮面の男に何者か尋ねるという矛盾について述べているんだ」ということですね。


Evey Hammond: Oh. Right. 


「確かに」

V: But on this most auspicious of nights, permit me then, in lieu of the more commonplace sobriquet, to suggest the character of this dramatis personae. 


「だが心地よい今宵に免じて教えよう

単なる通り名ではなく 劇中の主人公の“人となり”を」

auspicious「幸先の良い」

permit 人 to V 「人がVするのを許す」

in lieu of = in stead of「〜の代わりに」

commonplace「ありふれた、平凡な」

sobriquet「通り名」

suggest「示す」

dramatis personae 「登場人物」

*Vが自分のことを「登場人物」と言っているのがおもしろいところです。復讐、革命もVにとっては劇なんですね。シェイクスピア好きのVならではの表現です。

V: Voilà! In view, a humble vaudevillian veteran, cast vicariously as both victim and villain by the vicissitudes of Fate. This visage, no mere veneer of vanity, is a vestige of the vox populi, now vacant, vanished.



「では!ご覧の姿は道化師のもの。時に弱き物を、また、時に悪しき物を演じることも。
仮面はただの虚飾にあらず。もはや素顔をさらして歩ける世界ではないゆえだ。」
 
Vから始まる単語で韻を踏みながらスピーチを行います。
今回はその単語の意味を全て載せておきますね。 

Voilà!  「では!」
*ジャジャーン!という感じの注意を引く表現。フランス語です。

vaudevillian「寄席芸人、道化師」

veteran「ベテラン」

vicariously「身代わりに」

cast as A「Aとして演じる」
*キャスティングって言いますよね。castは元は「投げる」です。ニュースキャスターも世の中にニュースを投げかけているんですね。

victim「被害者」

villain「悪役」

vicissitude「(人生などの特に悪い方への)移り変わり」

fate「運命」
*Fateは原作コミックに登場する、国を支配しているスーパーコンピューターの名前です。映画ではアダム・サトラーがイングランドを治めていますが、原作ではこのコンピューターが治めています。
フェイトの移り変わり運命の移り変わりが巧く表現されています。

visage「顔、容貌」

veneer「うわべの飾り」
*ベニア板のことです。家具等の表面には仕上げとしてベニア板が貼られるので、ここでは「虚飾」という意味で使われています。

vanity「見栄、うぬぼれ」 
*vain「ムダな、空の」と同語源です。うぬぼれには中身が無いんです。

vestige「(過去の文明、慣習の)名残り」

vox populi「人民の声」

vacant「空いている、空っぽの」
*バカンスも仕事が休みで予定が空いてるってことですよね。

vanish「消える」

*忠実に訳すと「この仮面は虚栄心を飾るだけのものではなく、今は消え失せてしまった人民の声の名残だ」となります。独裁政治に陥り、人民の声が政治に繁栄されなくなったが、自分はまだその「声」を持っていると言っています。


V: However, this valorous visitation of a by-gone vexation, stands vivified and has vowed to vanquish these venal and virulent vermin vanguarding vice and vouchsafing the violently vicious and voracious violation of volition. 

「しかし、この厄介者が再び姿を現したのは、世の悪を正すため、この腐った世界にうごめくウジ虫を掃除する、そのために。」

valorous「勇ましい」

visitation「訪問」
*the Visitationで新約聖書に登場する「聖母マリアの訪問」です。聖書に登場する言葉はインパクトがあるので入試の長文でも登場します。

vexation「いらだち(悩み)の種」

vivify「活気づける」
*vivやvitが付く単語は「生きる」の意味をもちます。vivid「生き生きした」、vital「命に関わる、重要な」など

vow「誓う」

vanquish「打ち破る」

venal「金で動く」

virulent「猛毒を持った、悪意に満ちた」

vermin「害獣、害虫」

vanguard「先導者」
*これ動詞の意味は辞書に載ってないんですが、動詞として使っていると考えて「先導する」という意味にしておきます。名詞が動詞化することは、mushroom「キノコ」を動詞で使うと「急成長する」、stickを動詞で使うと「突き刺す、貼り付ける」といった意味になることを以前解説しています。
興味がある方はリンク先へ→mushroom, stick

vice「悪」
*『マイアミ・バイス』という映画があるので、見ればviceがどういうものか分かるかも。

vouchsafe「与える」

violently「乱暴に」

vicious「悪意のある」

voracious「貪欲な、大食の」
*単語は違いますがgreed「大食」やgluttony「大食」はキリスト教7つの大罪です。
7つの大罪になぞらえた映画『セブン』もそのうち解説します。

violation「冒涜」

volition「意志」


V: The only verdict is vengeance; a vendetta, held as a votive, not in vain, for the value and veracity of such shall one day vindicate the vigilant and the virtuous. 


そう、これは "血の復讐(ヴェンデッタ)" だ。復讐の誓いは今も生きている。悪を断ち切り、自由をもたらすために。

verdict「評決」

vengeance「復讐」
*vengeはリベンジrevengeと同じです。『アベンジャーズ』のベンジも同じ意味ですね。

vendetta「復讐、敵討ち」
*vengeanceよりも執念を感じます。

votive「自由意志の」

vain「無駄」

value「価値」

veracity「誠実さ、真実」

vindicate「(人・人格に対する)非難の不当性を立証する、正当さを立証する」

vigilant「絶えず警戒している」

virtuous「徳の高い」
*vice「悪徳」 ⇔virtue「徳」



V: Verily, this vichyssoise of verbiage veers most verbose, so let me simply add that it's my very good honor to meet you and you may call me V.


「少々長い自己紹介になったようだ。要するに、簡単に"V"と呼んでいただければ結構だ。」

verily「確かに」

vichyssoise「ヴィシソワーズ」
*ジャガイモの冷たいスープ。

verbiage「不要な語が多いこと、冗長」
*「冗長なヴィシソワーズ」これまでの長い自己紹介をスープに例えています。

veer「向きを変える」

verbose「言葉数が多い、くどい」
 
 
Evey Hammond: Are you, like, a crazy person? 

「あたまがおかしいの?」

V: I am quite sure they will say so. But to whom, might I ask, am I speaking with? 


もっともな質問だ ところで君は?

*to whom, might I ask, am I speaking with? すごく品のある疑問文です。真似したい。

Evey Hammond: I'm Evey. 


「イヴィー」

V: Evey? E-V. Of course you are.


「イヴィー? E-Vと? 運命だな」

*イヴィーの名前にもVが含まれていることに運命を感じています。

ちなみに、Eveyのスペルのアルファベットはそれぞれ...

Eは5番目のアルファベット

Vはギリシャ数字で5

Yは25番目のアルファベットです...よく練られてますよね。すげえです。


Evey Hammond: What does that mean? 


「何のこと?」


*疑問に思って当然ですね。

V: It means that I, like God, do not play with dice and do not believe in coincidence. Are you hurt? 

「やはりこの世に偶然はないということだ ケガはないか?」

*字幕には訳されていませんが、

I, like God, do not play with dice

 「私も、神と同様、サイコロは振らない」

という台詞はアインシュタインの

"At any rate, I am convinced that He(God) does not play dice."


「神はサイコロは振らないと、私は確信している」

という名言を引用しています。

この世に不確定なことはない、全ては運めだと言っているんですね。


 
さて、長くなりましたがこれで自己紹介シーンの解説は終了です。

ちなみに、このシーンの台詞の中のVの数...

いくつあると思います?



Vから始まる単語が48個

それ以外のVを含む単語が7個...


計55個です。


こだわりすぎ!


...といった感じで、トリビアで締まったので今日はここまでです。

明日も更新するのでお楽しみに!




4 件のコメント:

  1. アインシュタインの名言、知りませんでした!Vのセリフはそれを引用してるんですね。 丁寧な解説ありがとうございます。 

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  2. 今さっき映画をみて、心を打たれ、映画について調べてたらこのページにたどり着きました。vの数まで計算されてたなんて。。。私はシェイクスピアが好きなのでそのくだりがやっぱり面白かったです。最後の十二夜の台詞を持ってくるところなんてvのevに対する愛を感じました。私の大好きな作品phantom of the operaとleonを思い出させました。共通点があるからかなあ。とても素敵なオールナイトになりました(*^^*)

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    1. コメントありがとうございます。
      シェイクスピアの引用はやはり印象的ですよね。私が高校生のころシェイクスピアに興味を持てたのもVのおかげでした。
      是非、原作コミックもお読みください。映画とは違った魅力があります。

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