今回はFlorence + The Machineの "Over The Love"です!
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ギャツビー関連記事
① 音楽で語る映画、『華麗なるギャツビー』
②『華麗なるギャツビー』楽曲解説その1"Young And Beautiful"
③『華麗なるギャツビー』楽曲解説その2"Together"
④『華麗なるギャツビー』『欲望のバージニア』、狂騒の1920年代
⑤『華麗なるギャツビー』楽曲解説その3 "100$ BILL"
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この曲もギャツビーの世界観を構成する上で重要な役割を持っているのでしっかり解説していきます。
日本人が「黄色」に対して持つイメージは「明るい」や「注意」ですよね。
英語圏の人たちがそれぞれの色に対してどういうイメージを持っているか見ていきましょう...!
Florence + The Machine "Over The Love"
まずは歌詞と対訳から。しっかり解説するので最後まで読んでくださいね!
Ever since I was a child,
I've turned it over in my mind.
I sang by that piano, tore my yellow dress and,
Cried and cried and cried.
子どものころからずっと考え続けてた
私はピアノの傍で歌い
黄色いドレスを引きちぎると
涙に暮れた
And I don't wanna see what I've seen,
To undo what has been done.
Turn off all the lights,
Let the morning come.
もう見たくない、私が見てきたこと
無かったことにするために
灯りを全て消して
朝を迎えましょう
There's green light in my eyes,
And my lover on my mind.
And I'll sing from the piano, tear my yellow dress and,
Cry and cry and cry,
Over the love of you.
私の瞳に緑の灯りが映り
心には愛する人が浮かぶ
そして私はピアノを弾いて歌い、黄色いドレスを破り捨てると
涙に暮れるの
あなたの愛を想って
On this champagne, drunken home,
Against the current of old
Everybody see I love him.
シャンパンに酔いしれたこの家で
古い流れに逆らう私
誰の目から見ても
私は彼を愛してる
'Cause it's a feeling that you get,
When the afternoon is set,
On the bridge into the city.
そんな感じがするから
午後の時間が流れ
橋から街へと広がっていく
And I don't wanna see what I've seen,
To undo what has been done.
Turn off all the lights,
Let the morning come.
Now there's green light in my eyes,
And my lover on my mind.
And I'll sing from the piano, tear my yellow dress and,
Cry and cry and cry.
'Cause you're a hard soul to save,
With an ocean in the way,
But I'll get around it,
I'll get around it.
あなたを救うのは難しい
海に隔てられているから
それでも私は回り道をして
たどり着いてみせる
'Cause you're a hard soul to save,
With an ocean in the way,
But I’ll get around it.
Now there's green light in my eyes,
And my lover on my mind.
And I'll sing from that piano, tear my yellow dress and,
Cry and cry and cry and,
Over the love of you.
Cry and cry and cry and,
Over the love of you.
Cry and cry and cry and,
(I can see the green light),
(I can see it in your eyes).
(I can see the green light),
(I can see it in your eyes).
Over the love of you.
Cry and cry and cry and cry.
① yellowのイメージ
日本人が持っている「黄色」に対するイメージは「明るい」や「注意」です。
こんな感じですね。
どちらかと言えばプラスのイメージを連想すると思います。
ただ、英語圏の人にとってはyellowはマイナスのイメージの方が強いんです。
ジーニアス英和大辞典でも「黄色の」という意味以外に
・臆病な
・扇情的な
・嫉妬深い
という意味が記載されています。
白いシャツって長く着ていると黄ばんでいきますよね。
(これが嫌いなので僕は白いシャツは一着しか持ってません...)
「白」のイメージが「純粋」や「無垢」であるのに対して、
「黄色」は純粋さや無垢さが無くなってしまったイメージを持ちます。
ウェディングドレスは純白ですが、キャリー・マリガン演じるデイジー・ブキャナンは既婚者であるため、純粋さは失われているわけです。
歌詞には「黄色いドレスを破る」とあるので、別の人と結婚してしまったけれども、もう一度ギャツビーのもとに戻り、純粋だった自分に戻りたいという気持ちが表れていると解釈できます。
この曲が流れるのは、ギャツビーが開く盛大なパーティーが一段落した後、
ピアノの上に横になっている女性歌手が映るシーンです。
パーティーのシーンのもの凄い盛り上がりとは対照的に、
このシーンからは退廃的な印象を受けるはずです。
それがまさに欧米人の持つyellowのイメージなんですね。
学生時代に留学生のお世話をしていたときに感じたことなんですが、
欧米人はかなりのパーティー好きです。
ギャツビーの開くようなぶっ飛んだパーティーではありませんが、
人が集まってお酒があれば、いわゆる宅飲みでもパーティーと呼びます。
(パーティーって誘われたのに、行ってみたら宅飲みだったので衝撃を受けました。笑)
どんなパーティーでも、終わった後ってなんとなく寂しくなりますよね。
パーティー中の盛り上がりと対比されて、静けさや孤独感が際立つわけです。
② greenのイメージ
日本人が持つ「緑」に対するイメージは「若々しさ」や「未熟さ」でしょう。
英語圏の人々が持つイメージはyellowと同様、マイナスのイメージが強くなります。
日本語と同じように「若々しさ」というイメージもありますが、
as green as grass「未熟なひよっこ」という慣用句にあらわれているように、
「未熟さ」が強く出ていると思っていいでしょう。
この「未熟」というイメージ の他に重要なイメージが「嫉妬」です。
嫉妬に狂って顔が緑色になるため、という説明も見たことがありますが、
これはさすがに気持ち悪いですよね。ありえない。ピッコロかよ。って感じです。
緑色にはもともと嫉妬のイメージがあったそうですが、
このイメージを今にまで定着させたのは
シェイクスピアの『オセロ』に登場する"green-eyed monster"でしょう。
ヴェニスの軍人であるオセロが策略にかかり、妻の貞操を疑って殺してしまうという悲劇の中で登場する表現です。
直訳すれば「緑の目の怪物」ですが、テーマである「嫉妬」を明確に表し、強烈なインパクトを持つ表現です。
歌詞や『華麗なるギャツビー』の物語に登場するgreen lightも、まさにギャツビーの持つ嫉妬心、執念を表現していると言っていいでしょう。
『オセロ』は映画化もされているので、DVDを見てみるとより深い実感が得られると思いますが、
中でも見やすいのはジョシュ・ハートネット主演の『O』 (2001)です。
『オセロ』の舞台をアメリカの高校に移してはいますが、原作に忠実に再現されています。
シェイクスピアと聖書は現代英語に多大な影響を残しているので、関連する映画を観てみるとリアリティーを感じられるはずです。
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この曲は女性が歌っていることもあり、デイジーの心情を表現しているのは確実ですが、視点を変えればギャツビーの心理描写だと考えることもできます。
楽曲解説その1で解説した"Young And Beautiful"でもそうでしたが、曲をいろんな視点から解釈できるところがギャツビーのサウンドトラックのいいところだと思います。
『華麗なるギャツビー』を撮ったバズ・ラーマン監督の音楽に対するこだわりは凄まじいです。
"Over The Love"や"Together"の収録は監督も同席して、指揮者のように指示を出しながら収録してるんです。そんなの他では見たこと無い。異常です。
そんな異常なまでのこだわりが、素晴らしいサウンドトラック、映画を作っているんですね。
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