2012年12月16日日曜日

インセプション(解説編)

前回の「インセプション」のセリフの解説です。

defineという単語に重点を置いて解説します。
 

*ちょっとネタバレあります



夢の下の階層に堕ちたロバートを救出するため、コブとアリアドネも下の階層に降りていくシーン。

ロバートをどうやって上に戻すのかたずねられたコブがアリアドネに言うセリフです。



I'm going to improvise.


アドリブだ。




Listen, there's something you should know about me...

about inception.


俺について...インセプションについて話しておきたいことがある。


An idea is like a virus,

resilient,

highly contagious.

アイデアはウィルスのように
きわめて早く伝染する 


And the smallest seed of an idea can grow.

ほんの小さなアイデアの種ですら
大きくなっていく
   


ほんの小さな〜と訳したのは最上級が使われているからです。

「もっとも小さなアイデアでも時間が経てば大きくなる可能性がある」 

というのが直訳です。 









 

ここからがポイントのdefine です。

It can grow to define

or destroy you.


Itが指しているのはideaですね。

growも前の文と同様に一度植え付けたアイデアがどんどん育っていく様子を表します。

to以下が今回注目したい動詞のdefineです。


toは不定詞の副詞的用法です。(受験生は言われなくても気づくように。)

アイデアが大きくなって、その結果〜ということを示します。

つまり、アイデアが大きく育ち、その結果 define youすることもあれば、

destroy youすることもあるということですね。


destroyは「破壊する」なので

destroy youは「人を破滅させる」というようにとらえておきましょう。


ではdefine youはどう訳せばよいでしょうか。

define(ディファイン)はコンタクトレンズの商品名にもなっています。





黒目を大きく見せる商品ですね。

defineは辞書的には「定義する」という意味ですが、

もともとは「(輪郭を)はっきりさせる」という意味です。

つまりコンタクトレンズのディファインは、

黒目の輪郭をはっきりさせてるんですね。



インセプションに登場したdefineも「輪郭をはっきりさせる」という意味で考えるとうまくいきます。

後ろにyouが来てますが、これは「あなた」ではなく一般的な「すべての人」と考えましょう。

そして英語でも日本語でもそうですが、

「一般的な人」を考えるときは「人生」まで連想するといいでしょう。


つまり、define youは

「人が歩む人生の輪郭をはっきりさせる」

→「人に道を示す」ということになります。


 



つまり

It can grow to define
or destroy you. 
アイデアは人に道を示すか
破滅させるかだ

と言っているんですね。

映画の核心にある、「ほんの小さなアイデアが全てを変えてしまう」というテーマにつながるセリフでした。





*ここからさらにネタバレします


2年前に公開された映画なので議論するのは今更な感じもしますが、

ラストシーンのトーテムは回り続けるのか

僕なりの考えもついでなので書いときたいと思います。


結論から言えば「回り続ける」と思います。

理由は物理的な問題です。

「回り続ければまだ夢の中」「止まれば現実」という判断基準になっているトーテムですが、

初めて登場したシーンでは回し始めてから18秒で止まっています。


それに対しラストシーンでは48秒も回り続けています。


実際にインセプションのブルーレイの購入特典でついてきたトーテムを回してみたんですが、

どれだけ頑張っても20秒が限界でした。(暇なわけじゃないですよ)

物理的な視点からみても「回り続ける」ので、

ラストシーンではまだ夢の中にいると考えられます。

(監督のクリストファー・ノーランは徹底的にリアリティを追求するので秒数も意識してるはず)


夢の中にいるとなると、幸せそうにみえるあのシーンも、

本当に幸せなのか、はたまたそれも幸せなのか、

いろいろ考えさせられますね。



次回は同じ監督の「バットマン・ビギンズ」のワンシーンを取りあげます。

ではまた!











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